南シナ海でフィリピンと中国の領土問題が大きくなっていることを背景に、日本政府が、フィリピン軍に偵察に使用できる規模の練習機を供与することを検討しはじめたとのニュースが出ています。
「日本がフィリピン軍に練習機の供与検討、南シナ海での中国への防衛力を強化」
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/08/post-3830_1.php
他国軍の能力支援に、自衛隊の中古装備を輸出するのははじめてとのことで、大きな一歩を踏み出そうとしている気がします。こうした動きと、安保法案を一体として見ないと、安保法案が持つ意味が俯瞰的に理解できないのかなと思いますね。全体を理解した上で、政治の選択として、国の防衛をどう考えるかが大事。
あまり短絡な話に落としこむと真実をわからなくするし、政治的思考としてはよくないと思うのですが、①先制攻撃をするリスクか、②先制攻撃をされるリスクかが問われています。①が政府、②は安保法案を反対している側の抱えるリスクなわけですよね。その上で、現在の議論の流れの問題点は、①の政府は議論や手続きの重要性を軽視し、言葉をあいまいにしわかりにくくしているのが問題で、②の反対派は論理的ではない点が問題だと感じます。
そして今回検討されているのは、海上自衛隊が操縦士育成に使用している練習機「TC90」の供与。もともと米ビーチクラフト社が開発したビジネス機で、高い軍事能力はないけれども、偵察機にはできるとのこと。「あくまで偵察機」と考えることはできますが、「自衛隊が他国に航空機を貸す行為」は、内外にとても大きなインパクトを持つはずです。
フィリピンは現在アメリカにも軍事用航空機の援助要請をしており、中国がそれを批判しています。一方、日本は、親日派のアキノ大統領が退任する来年の選挙までに、フィリピンとの関係を強化しておきたい考え。ビジネス面でも、200を超える中国にある日系企業が、フィリピンに拠点を移していく流れ(「More than 200 Japanese Manufacturing Companies in China to be Relocated in Philippine」(http://www.manilalivewire.com/2015/08/more-than-200-of-japanese-manufacturing-companies-in-china-to-be-relocated-in-the-philippines/)で、日本政府がそうしたことも考慮しているのは間違いないかと思います。
ただ今回の航空機の許与は、日本に国有財産を他国に譲渡を禁止する財政法があるので、法律の改定を要するほか、あくまで両政府ともまだまだ検討初期段階だと述べていること。日本で「戦争」が思い出される8月を迎える中、安保法案とともに、一緒に考えられる問題だと思います。
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