昨日のフィリピン大統領選で、非公式の調査によると、ドゥテルテ氏が大差をつけ、票をとる予想が出ており、このままフィリピン大統領になる公算が高くなっています。
「Duterte breaches 15-million mark in unofficial tally」
大統領選と副大統領選のそれぞれの数字は以下。
大統領選
・Rodrigo Duterte: 15,014,824
• Manuel Roxas II: 9,005,569
• Grace Poe: 8,413,679
• Jejomar Binay: 4,988,544
• Miriam Defensor-Santiago: 1,357,494
副大統領
・Leni Robredo: 13,108,176
• Ferdinand Marcos Jr.: 13,032,667
• Alan Peter Cayetano: 5,374,180
• Francis Escudero: 4,517,041
• Antonio Trillanes IV: 783,353
• Gregorio Honasan II: 700,857
長い間、追ってきたフィリピン大統領選。ドゥテルテ氏に決まりそうですね。
ここまでのフィリピン大統領選の候補者の支持率の流れを、これまでのブログに沿いながら、少しまとめてみます。
●ビナイ氏先行
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●ビナイ氏の不正疑惑で、ポー氏先行
(ブログ「3分でわかる! 2016年のフィリピン次期大統領候補と支持率の推移」http://yoshi-jpn.com/3351/)
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●ポー氏の国籍問題、ドゥテルテ氏出馬表明
(ブログ「フィリピン・次期大統領選の最右翼のポー氏がまさかの脱落!」http://yoshi-jpn.com/3630/、ブログ「ポー氏の国籍問題を受け、ドゥテルテ氏が大統領出馬へ 混沌としてきたフィリピン大統領選」http://yoshi-jpn.com/3609/)
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●ドゥテルテ氏優勢
(ブログ「フィリピン大統領選、ドゥテルテ氏が支持率1位に躍進!」http://yoshi-jpn.com/3635/)
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●ドゥテルテ氏、過激発言で転落、ビナイ氏再浮上
(ブログ「フィリピン大統領選の支持率、ビナイ氏が一年ぶりにトップ返り咲き」http://yoshi-jpn.com/3655/、ブログ「フィリピン大統領選 ビナイ氏の支持層・ドゥテルテ氏の支持率急落の裏にあるフィリピンのドラッグ問題」http://yoshi-jpn.com/3670/)
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●ポー氏がトップに返り咲き
(ブログ「ポー氏が1位に返り咲きのフィリピン大統領選、支持層の背景に父 カガヤンデオロで2月21日に5大統領候補が討論へ」http://yoshi-jpn.com/3774/)
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●討論会、ポー氏とドゥテルテ氏の対決に
(ブログ「フィリピン大統領選、討論会で、ポー氏とドゥテルテ氏の2強の様相に!」http://yoshi-jpn.com/3855/)
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●ドゥテルテ氏抜け出す
(ブログ「フィリピン大統領選、1カ月前でドゥテルテ氏が抜け出す支持率30%」http://yoshi-jpn.com/3885/)
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●サンティアゴ氏がドゥテルテ氏の支持を表明
それにしてもよく書いてきましたね(笑) ただの趣味ですが、読み返して思うことは、一連の流れ・フィリピン人の支持変遷の軌跡がそれなりにまとまっていると思います。
そして今回の大統領選の決め手は、「変化」だと思います。
そのためのキーワードが次の2点ではないかと思っています。
①「一般人にまで富が流れない経済成長のフェーズ」
②「政治不信」
これまでも書いたように、アキノ大統領の政策により、フィリピンの政治・経済は大きく改善してきたと個人的には思っています。ただこれを多くのフィリピン人は感じていません。
私はこのギャップを以下のように考えています。
この一般人にまで富が流れない経済成長のフェーズは、どの国でも起こるもの。経済成長の恩恵が多くの国民に享受される前に、一部の豊かな層に富が集中していく。その後、そうした層が投資を行い、国内に富が流れていく。そして内需が高まり、知らぬ間に大きく生活水準が向上している。というのが一連の流れ。ちなみに日本も再度経済成長に向かいたければ、これは必要な過程。
そうした意味で、フィリピンもその他のアジアと同様に、そうした経済成長のプロセスを経験していると思うのです。
しかしこの豊かな層に富が集中していくフェーズでは、一般の人の生活は、物価上昇に賃金上昇が追いつかないため、より苦しくなっていきます。これが多くの国では、デモやストという形で噴出します。フィリピンもこうしたフェーズです。
ただし私の見立てでは、多くのフィリピン人はこうした経済の現実が見えていない気がしました。
そしてこれと相まって、フィリピンの人の根っこにあるのが「政治不信」です。政治家が汚職にまみれ、私腹を肥やしているということです。この経済成長の過程で生活が苦しくなる中で必要なものの一つが、いわゆる政治への信頼です。つまり政治家が、国を良くしようとしていると思える事です。
しかしフィリピン人はこうした政治への信頼を持っていません。
こうした政治不信と、賃金などが上昇していかない現実(ブログ「アジア諸国の最低賃金の動向 上昇率はホーチミン(ベトナム)がトップ、最低がマニラ(フィリピン) フィリピンの最低賃金は17地区別250~481ペソ」http://yoshi-jpn.com/3666/)。が、多くのフィリピン人の中で、アキノ大統領への低評価と結びついていると感じます。
この結果、「中央の政治権力、汚職に巻き込まれていない」「今までの政治家とは違う」「何かしてくれそうな」人物として、ドゥテルテ氏が選ばれたのではないでしょうか。
そしてなにげに、選挙3日前に、サンティアゴ氏がドゥテルテ氏の支持を表明したことも大きいと感じます。私がフィリピン人たちと話していると、サンティアゴ氏を政治家として評価する声はとても多く、今回の大統領選でも、彼女の健康面さえ問題がなければ、一定の支持を集めたものと考えられます。そうした彼女が、最後に支持を表明したのがドゥテルテ氏。これにより、多くの無党派層が流れたのではとも推測しています。
こうしてフィリピン人たちが求めた「変化」の象徴として、ドゥテルテ氏が考えられるように思います。
ただ個人的には、「変化」は今のフィリピンには必要ではなく、アキノ大統領が築いた路線を改善していくのが、フィリピンにとって、ベターな選択だろうと思うようになりました。そういう意味で、私はドゥテルテ氏のやり方は好きですが、今回もし私が投票したなら、あくまでイメージですが、「ロハス氏」を選んだだろうなと思います。
ドゥテルテ氏がより良い路線にもっていくことは十分に考えられます。でも個人的に、政治とは、多くの「平時」とわずかな「緊急時」で構成されており、「変化」の人が必要なのは「緊急時」であると考えるので、今回の選挙に関しては、「変化」の人は、現在のフィリピンの良い流れを絶つ可能性があるので、諸刃の剣だと思うからです。また「変化のための変化」は、政治の世界には不必要だとも思っています。
今回大統領選を通して、自分なりにフィリピンと向き合い、たくさんのことを学びました。
この国の若い人々の中に、「チャレンジ」を好み、「悪」を嫌う傾向がはっきりと見ることができたのも収穫です。同時に、私は個人的に好きだったりはするのですが、「集団」よりも「個人」「自己」を中心に置き、短期的思考になりがちなフィリピン人の特性も垣間見えた気がします。
今後はドゥテルテ氏がどうしたことを実行し、どう国内外に評価されていくのかに注目していきたいですね。フィリピンにさらに飛躍してもらいたい!
ただしフィリピンは正式結果までに数日から1週間ほどかかる途上国。たぶんドゥテルテ氏で決定だろうと思うので、ブログに書いているわけですが、まだまだ覆る可能性はゼロではないですよ、と付加しておきます。
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