閣議決定された「ホワイトカラー・エグゼンプション」。対象者は「年収1075万円以上」、研究開発者や為替ディーラーなど高度な専門業務に限定するとされています。前回の安倍内閣では否決されましたが、世論の流れが変わってきているのでしょうか。ただ労働基準監査官ですら、反対多数の状況のようです。
「残業代ゼロ:労働基準監督官の過半数「反対」」
http://mainichi.jp/select/news/20150403k0000e040260000c.html
この調査では、導入に「賛成」は13.3%、「反対」は53.6%、「どちらとも言えない」が33.1%。大多数の人が反対です。
個人的には、この制度がうまく働くためには、いくつかの前提があると感じます。
- 転職しやすい環境
- 成果報酬と結果責任
- 仕事が終われば(上司の存在に関係なく)帰れる
海外ではこうした環境がある程度担保されていることで、問題はあっても機能していると感じます。最終的には会社を辞めるなどで対応できるからです。
ただし日本の労働環境における暗黙の前提は、以下のような状況ではないでしょうか。
1. 「転職が良い」とされていない
2. 「長時間労働が良い」という慣習
3. 「部下は上司より先に帰れない」という暗黙のルール
そして特にこの3がやっかい。
この「ホワイトカラー・エグゼンプション」は、上記のように、1075万円以上の年収などの条件がついています。ところがこの3により、元来その対象ではない層にも影響がでる可能性があります。上司を置いて帰ることが良しとはされていないからです。上司に手伝いを頼まれて帰宅することができるのでしょうか。
こうした空気はどなたも経験済みではないでしょうか。私も経験しました。私は毎日早朝から深夜まで働いていました。それに対して、上司は午前9時過ぎ出勤、午後6時帰宅。たまに上司が遅い時間まで働き、私が先に帰宅しようとしても、「なんだ、もう帰るのか」みたいな話をされました。こちらは毎日上司の倍ほど働いていたわけで、どうかしていると思ったものです。
一方、こうした状況を良いと思わない、いわゆる”良い上司”は、一人で仕事をまるかぶりする可能性があります。これが多くの方が危惧されている部分ではないでしょうか。
政府の狙いとしては理解できる部分もあります。高給取りの層をつくり、海外からも優秀な人材を集める。そしてそうした層が、投資をしたり、ビジネスを興し、それが国の豊かさを引っ張り上げる。海外もそうして発展しているからです。
ただそのための前提が整っておらず、仕事以外の時間を大切にする傾向が強い海外でも過酷な労働環境が生じているのに、日本ではより悲惨な労働環境になる気もします。上記問題をカバーするための、ルール作りは必須だと感じています。
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