ギリシャのデフォルトに見る、守られてきた「先進国というユートピア」の崩壊

ギリシャのデフォルトに見る、守られてきた「先進国というユートピア」の崩壊

ギリシャが国際通貨基金(IMF)への返済が滞納となり、事実上の「デフォルト」になっています。先進国の返済不能になったのは、IMF設立以来71年の中で初めての出来事となっています。

ギリシャがデフォルト 国民投票が否決ならユーロ離脱は必至

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現在、ギリシャ国民は60ユーロ(日本円で8千円程度)に預金の引き出しを制限されて、騒然としています。ただこれは日本にとっても対岸の火で終わらないような、大きなパラダイムの転換の兆しではないかと考えています。今回の金融ショックが、日本の株価・為替に影響を与えるというような小さな流れの話ではなく、です。

なので、少し記録としてメモを書いておこうと思います。正直、時代の大きなうねりの中で、書き記しておきたいメモが最近山ほど出てきていますが、少しずつ時間があるときに書いていければと。

では早速はじめます。まずこれまでは「先進国」と「途上国」という大きな枠組みがあり、ずっと搾取する構造が、厳然とありました。第二次世界大戦後に、「先進国」といわれた国は、良いポジションを享受できてきたわけです。まさにIMFもそうした過程で生まれてきているわけで、今回「先進国で初めて返済滞納」というのが象徴的な出来事だと思えるのです。

ただ「先進国」「途上国」という捉え方の中で、よく勘違いしてしまう事象は、例えば、アフリカは昔から飢餓が多かったということ。しかし実際アフリカは第二次大戦後に「先進国」に本格的に搾取され始めて、貧しくなったということです。これは南米なども同じ。かつてアフリカには自分たちが食べるための「農作物」が豊富にあったわけですが、海外輸出のための「1品」大量生産体制に変更し、貧しくなっていったわけです。その裏には社会・政治の構造として、「先進国」が「途上国」から富を吸い上げる仕組みができており、さらにそこには途上国の「権力を持った層」の存在も欠かせません。彼らの権力が固定化される仕組みでもありました。

しかしもはや「途上国」は、かつての「途上国」の地位に留まることはなくなりつつあります。「先進国」の富を持つ層を通じて、富が「途上国」に移り始めているからです。アフリカやアジアが凄い勢いで成長していますが、自力で伸びるだけではなく、それを後押しする巨大資本が「先進国」から入っています。

私の関わるフィリピンの場合、明らかにジャパン・マネーの力も感じます。もちろんコールセンターなどを始め、米国などの資本も入っていますが、日系企業の進出が、フィリピンの経済を後押ししているのは間違いありません。そうした勢いをフィリピンと関わる3年半ほどでものすごく感じてきました。

そうした中で富が動き、これまで守られてきた「途上国から搾取する先進国」という枠組みが融解しているのです。これはもはや対岸の火ではないと感じています。日本も同じ枠組みで、優位なポジションを享受してきた国だからです。

ただいつも言っているように、これは国家という枠組みが消えて、単にフラットなグローバル化が起こるという話ではなく、日本の社会でも、中間層が落ち込んでいき、搾取される側になっていくので、社会・政治に不満を持つ層がナショナリズム的な動きや思想に共鳴していきます。ここでは詳細を省きますが、日本全体ですでにそうした流れを感じますよね。グローバル化と保守化(ナショナリズム化)の相反する動きの双方が高まっています。

まだまだ「先進国」の優位さがすべて消えるわけではありませんが、確実に弱まりつつあるという事実が、今回のギリシャのデフォルトに象徴的に表れているのではないかというふうに私は思うのです。さらに問題がどんどん積み上がっていく日本は、決して例外ではなく、しかもその危機は漠然としたものというよりも、すでに明らかなものになりつつあるとさえ感じています。「先進国」にとってユートピアであった時代は終焉を迎えつつあるように思います。

 

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