TEDでマイケル・サンデル氏のスピーチを見つけ、思わずクリックしてしまいました。以下のリンクがそれです。
マイケル・サンデル: なぜ市場に市民生活を託すべきではないのか?http://www.ted.com/talks/lang/ja/michael_sandel_why_we_shouldn_t_trust_markets_with_our_civic_life.html
タイトルは小難しそうですが、彼のプレゼンは非常にわかりやすく、深い所まで自然と導いてくれるので、ぜひご覧になってみてください。
彼はアメリカの政治哲学者であり、ハーバード大学の教授。大学院生時代、政治思想・哲学の研究をしていた私は、まだ日本では無名であったサンデル氏の著作を数冊読み、議論をしていました。彼は、“現代”の偉大な哲学者ジョン・ロールズを批判したことで有名です。彼はその後、数年前に白熱講義シリーズで、日本でも一躍有名になりましたよね。もし興味があれば、その本も出版されていますので、どうぞ。
このスピーチで、はっとしたことが2点あります。ちなみに大学・大学院時代はこんなことばかり考えていました(笑)
1点は、このスピーチはアメリカ社会を前提に、市場経済が社会の隅々まで浸透する中で、「何か目に見えない大事なものを失っていっているのではないか」と、人々が常日頃感じていることを、非常に平易な言葉で語っています。そしてそれは、日本人の私たちも共有できるような、現代社会が抱える問題だと改めて感じました。国や地域を超えた、“現代”もしくは"ポストモダン"社会が抱える共通の根源的な課題です。
2点目は、日本では格差社会として語られているような現象を、「共有する市民生活の消失」と表現し、皆が語り合う共通の“場”がなくなってきている現象として語っています。格差社会とは、結局はお金と結びつき、そこから生じる意味での機会の差に注目しがちな対象の狭い言葉です。しかし彼が述べている事は、規範や人間生活の根源的な部分も含む、目に見えない価値についても語っており、より多くの失われるものへの眼差しがあります。
この部分はユルゲン・ハーバーマスやハンナ・アーレントなど偉大な研究者が、現代社会が持つ危険性を語っていますので、すでに古典にあたるかと思いますが、興味ある方は彼らの著作を読むことをおススメいたします。
現代は、個が分断されていく時代。「『一人一人が自力でやっていくしかない』、という答えしかない」と決めつけてしまうことは、この現代社会が抱える問題への解決を考える機会を奪い、対案への思考、大事な何かへの眼差しを閉ざしてしまうことになる、と改めて考えさせられました。何かを決めつける行為は、視野を狭め、可能性を消してしまいます。
上記スピーチは、日本語のサブタイトルもついていますので、ぜひお時間があるときにでも見てください。単純にプレゼンとしても素晴らしく、非常にゆっくり喋ってくれるので、英語も聞き取りやすく、学びが多いかと思いますので。
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